2005/05/23

取る

詠みについて

序歌

暗記時間が終わると、いよいよ競技の開始です。
詠み手が暗記時間終了を告げると、競技する人は、まずお互いに礼をし、続いて詠み手にも礼をします。
詠み手は、一番最初は百人一首にない歌を一首詠みます。これを序歌といいます。
どんな歌を詠むか決まりはないようですが、全日本かるた協会の指定序歌は、

なにはずに咲くやこの花冬ごもり いまを春辺と咲くやこの花

という歌になっており、全国の大会で使用されています。

詠み方

競技かるたでは、詠み方にもきちんとしたきまりがあります。それを簡単に説明します。
まず基本として、詠み手が上の句を詠むと、選手は一斉に札を払います。詠み手はその段階で下の句は詠みません。そして、選手が払った札の整理を終えると、下の句を詠み、続けて次の札の上の句を詠む、という流れになります。
例えば、前に詠んだ札が「あらざらむ・・・」で、次に詠む札が「いまこむと・・・」だとします。
選手達の準備がすむと、詠み手は

いまひとたびの あふこともがな

と詠み、続けて

いまこむと いいしばかりに ながつきの

と詠むのですが、この時、下の句の最後の音は3秒間のばし(余韻)1秒間をおいて、上の句の決まり字までを一気に詠まなければなりません。


(「〜」が1秒)
  
     

選手は、上の句の最初の音の子音を聞き分けるくらい、この一瞬に集中していますので、この時には回りで見ている人も一切物音を立てたり身動きしたりしないようにします。


取りについて

構える

構え 選手はお互いに3段に並べた札の手前に、正座しています。
そして、詠み手が下の句を読み始めると、腰を上げて「構え」の体勢に入ります。
この「構え」は、人によって様々ですが、基本的に右利きの人の場合、右手を軽く握って 自陣の下段の外側の、真ん中辺に置き、左手を左端に置いて体を支え、足は少し開いて、 右の膝を少し後ろに下げる、といった姿勢をとります。
体の大きさなどによって人それぞれ違った形になりますが、大体右の写真のような感じになります。

取る

札が詠まれたら、詠まれた札(出札と呼びます)に直接さわるか、 出札を競技線の外の外側に出せば取りとなります。

競技線というのは、選手がお互いに並べた札の一番外側をたどった線です。
つまり、に説明した、 87cmX札3段という枠が、各陣の競技線です。

この競技線から出札を出す、ということはどういうことかと言うと、他の札を払って出札を押し出す、ということです。
これは一般のかるたとりとの大きな違いの一つで、競技かるたでは、出札と同一の陣内の札には触ってもお手つきにならないのです。

出す 左図で、赤い印の札を出札とし、青い印の札を触って矢印の方向に払い、赤い印の札を競技線から出せば、取りとなるわけです。

払う

払い 札を取る際、どのような形で札に触るか、あるいは押し出すか、ということは 特に決まりはありません。ぴと、っと押さえてもいいし、豪快に払い飛ばしてもいいのです。
しかし、勝負に勝つためには、一番早く札を取れるような取り方をする必要があります。
それが「払い手」です。
構えの体勢から、出札の位置に右手を素早く伸ばし、出札の位置で止まることなく、そのまま腕を振り抜きます。振り抜くと、そのままでは体制が崩れて倒れてしまうので、体の脇まで腕が戻ってきたところで畳をたたいてバランスを取ります。
ほとんどの選手は、ほとんどの札を、この「払い手」で取ります。
払われた札は結構遠くまで飛んでいきます。窓など開けていると外に出てしまいますし、 襖や障子を破ることもありますので、注意しましょう。


決まり字について

決まり字

選手は、通常上の句の1音目から6音目が詠まれる間に札を取ります。
ここで1音目から6音目というのは、強い人なら1音で、弱い人でも6音で取れる、という意味ではありません。1音で取れる札もあれば、6音聴かないと取れない札もある、ということなのです。
例えば、百首の歌のうち、「い」という音で始まる歌は次の3首です。

いまこむといいしばかりにながつきの ありあけのつきをまちいでつるかな」
いまはただおもひたえなむとばかりを ひとづてならでいふよしもがな」
いにしえのならのみやこのやえざくら けふここのえににほいぬるかな」

選手は詠み手が「い」まで詠んだ段階で、百枚の中からこの3枚まで絞り込むことができるわけです。そして、次に詠み手が発する音が「に」であれば、その段階で「いにしえの」の歌に特定できます。「い」の次が「ま」であれば、まだ二通りの可能性があるためもう一音待たなければなりません。
このように、百枚の札の中から一枚を特定する条件となる音を、「決まり字」といいます。
また、「いまこ」と「いまは」のように、途中まで決まり字が同じ札を「友札」と呼びます。
「い」の例では太字で示した部分(「いまこ」、「いまは」、「いに」)が決まり字となります。
百枚の歌すべてについてこの「決まり字」を検討すると、1文字から6文字までですべての歌が特定できる、というわけです。

【資料】決まり字の一覧表

決まり字の変化

決まり字は、常に変化していきます。
先ほどの「い」の例で言えば、「いまこむと・・・」の札の決まり字は「いまこ」の3字決まりですが、「いまは」の札が出てしまえば、もう二度と詠まれることはありませんから、「いま」の段階で「いまこむと」の札に特定することができる(=2字決まりとなる)のです。
こうして、決まり字は試合が進むにつれて次第に短くなり、終盤にはすべての札が1字決まりと いうような状態になります。


勝敗の行方

勝敗

お互いが25枚の札を自陣に並べて始めたこの競技の勝敗は、 自陣の札を先になくした方が勝ちとなります。
競技の中で、選手はもちろん、自陣の札でも敵陣の札でも取ることができます。
自陣の札を取れば、自陣が一枚減るわけですから、勝利へ近づくことになります。
一方、敵陣の札を取った場合、自陣から好きな札を一枚敵陣へ「送る」ことにより、 自陣の札を減らしていきます。
こうしてお互いに札を減らしながら、最後に自陣の札をすべてなくした者の 勝ちとなるのです。

お手つき

先ほどちらっとお話ししましたが、出札のあった方の陣はいくら触ってもかまいませんが、 出札のない方の陣を触ると、「お手つき」となります。
お手つきをすると、相手から一枚札を送られてしまいます。
例えばお互いに残り10枚という場面でお手つきすると、相手が一枚送りますので、 9枚ー11枚と、一気に2枚のリードを許してしまうことになります。お手つきは 多くの試合で勝負の鍵を握る重大なポイントなのです。

これで一通りの説明は終わりです。お疲れさまでした。
間違っている箇所、不適切な箇所がありましたらお知らせ下さい。

かるたとりのこべやへ戻る

Copyright© 1996-2005 Nakad All Rights Reserved.